> ニュース一覧 > 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.23・・・「震災を機に、日本のミホ・ナガタを探しています」とフェイスブックのメッセージが来た(ライクス)- 2018.01.07(日) 10:00
「43歳から始める女一人、アメリカ留学」No.23・・・「震災を機に、日本のミホ・ナガタを探しています」とフェイスブックのメッセージが来た
ライクス
2018.01.07(日) 10:00
今朝、PCを開くと「チェルシー」という知らない女性から、メッセージが届いていた。
「日本の友達、ミホ・ナガタを探しています。彼女は私の少女時代のペンパルでした。あなたは私の知るミホ・ナガタにしては若すぎるように見えますが、いま、私はフェイスブックで全てのミホ・ナガタに連絡をして彼女を探しています。サンクス!」
チェルシーのプロフィールには、年の頃は40歳前後と思われるとても美しい女性の写真があった。
たぶん私だ、と思った。私は中1か中2の頃に、アメリカ人の女の子と文通をしていた。もっとも英語を習い始めたばかりの私に、英語で文章が書けるわけはなく、教科書や海外ペンパルの例文集のような本から、あてはまる文章を探して、写して書いていた。でも回数が重なると、例文集では表現が足りなくなってくる。書くのが億劫になり、いつの間にかそのペンパルとの交流は、自然消滅した。
日本中にミホ・ナガタは沢山いるし、私と同世代の人なら、当時流行していた文通(小4コースとか中1コースといった子ども向け雑誌には、必ず、文通希望者コーナーがあった)ブームにのって、アメリカ人ペンパルを見つけた少女も大勢いただろう。
でもあれは彼女だ、と私はほぼ確信している。「チェルシーという名前のお菓子が日本にはある」と、彼女に説明した記憶が、そのメールを受け取ってから2,3時間後に、よみがえってきたからだ。
たかが中学生の文通とはいえ、まったく共通の話題のない者同士のコミュニケーションは難しいものだと、当時の私は実感した。そこで思いついたのが、明治製菓のキャラメル味キャンデー「チェルシー」ネタだった。
いまアメリカで日々体験しているコミュニケーションの難しさを、思えば30年前すでに、文通で体験していたわけだ。余談だがこのネタづくりは今もって活用中だ。こちらでよく出会う「エリカ」という名前の女性には、必ず、「日本にもあなたと同じ名のとても美人な女優がいる。ちょっと私生活がお騒がせな人で、実力のあるパリス・ヒルトンみたいなイメージかな」と、「ミカ」という名前の女性には、「すごい美人なんだけど全身整形の噂がある、ミカというタレントが日本にいる」と話しかけている。
ところでそのチェルシーは、30年もの時を経て、なぜ今、ミホ・ナガタを思い出したのか。このたびの地震・津波・原発がきっかけだった。「あなたのことは、もしあなたがその少女ならだけど、ずっと忘れていなかったけれど、今回の地震をきっかけに、古い友人ミホ・ナガタを探してみようと思いました」。彼女はこう書いていた。
今回の大災害によって、アメリカではかなりの深さの草の根レベルで、日本への関心が高まっていると、私はますます感じた。いま、日本には、世界中から支援の手が届いていると聞く。ただ、それがいつまで続くのか。災害の苦難の深さは、数字で測るべきものではないけれども、12兆円、20兆円、いやそれ以上だと試算の出ている復興にかかる費用の天文学的な大きさに、目眩を覚えているのは私だけではないだろう。
アメリカ人であちこちからもらうメールのほとんどに、「何かできることがあれば知らせて下さい」と書いてある。社交辞令も、こういう時には、額面通り受け取らせてもらおう。「募金箱を見つけたら、募金をしてください」と書くと、これまたほとんどの人が「必ずします」「友達にも呼びかけます」と返信をしてくれる。
先週訪ねたサンフランシスコでは、「日本を救おう」と日本語で書かれたTシャツを着た男性を目にしたし、カトリック教会(オールド・セイントマリーズ教会)では、「日本のために祈りましょう」というコンサートの催しを行う、とあった。ジャパンタウンには、募金呼びかけの旗が舞っていた。
私の所属する空手道場SKAでも、在米全道場で募金活動を始めた。シアトルのレストランでも、「このメニューの代金は日本への募金にします」という募金を見かけるし、先週(3月20日の週)あたりから、ここかしこで、日本への募金活動の立ち上がりを見る機会が、増えてきた。
残念ながら、3月27日現在、グーグルで「Japan Donation」と検索すると、筆頭に来るのが、「日本には募金をするな」という、ロイター通信サイトが運営するブログサイトの、某ブロガーによるブログが挙がる。彼の挙げる理由は「ハイチの時もそうだったが、募金は復興の役にたたない。日本は豊かな国で、募金の必要はない」というもの。しかしこのブログには非難が殺到。毎回、1,2件のコメントがせいぜいのこの人のエントリーに、256件ものコメントが並び、その多くは「何を言っているのか?」といった批判だった。
シアトルも、先日訪ねたサンフランシスコも、アメリカの中ではアジア人の多い都市である。そんな場所で見る限りの体験談に、さして、価値はないと思われるかもしれない。しかし肌感覚というものをベースに言わせてもらえるなら、アメリカ人の、日本への関心は深い地層から、掘り起こされている。
2010年の10月に渡米してから3月10日までの私は、「日本って、たいして関心をもたれていないな」と、大学で、取材先で、アメリカ人と会うたびに肌身を持って感じてきた。話題にあがるのは、20年続く不況か、ゲームのことくらい。一般的なアメリカ人にとっては、日本について、今語りたいと思うテーマがあまりないのだなという印象だった。
今は違う。会う人、知り合う人が、日本について語りたがっている。地震や津波、原発事故の起きるシステムについて、日本人全体の知識レベルが上がったように、アメリカ人の知識レベルも上がっている。津波防波堤の意義について、東京電力の対応について、エネルギー政策について、そして自分の友人の家族は無事だった、といった個人的な事柄について。自分の肌感覚をベースにいわせてもらうと、日本へのアメリカからの支援の動きは、私たちが予想する以上に広がり、そして長く続くのではないか。希望的観測も含めてだが、私はそう感じている。
フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]
[電子書籍]
43歳から始める女一人、アメリカ留学 上巻
上巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209499
下巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/209500
問題少女 第1巻〜最終巻
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/215228
株式会社ライクスより
末期ガンと聞いていましたが、2015年10月19日に亡くなられたことを知りました。
知人の紹介で福島市内で会ったのが出会いでした。とても素直な感じの素敵な女性だったと記憶しています。アメリカに勉強しにいくと聞いでアメリカ通信を書いてというのが「43歳から始める女一人、アメリカ留学」の始まりでした。電子出版を出したいという長田さんの思いは、今の世に少しでも痕跡を残したいとの思いだったのかもしれません。
売り上げは、全て長田さんの仏花とさせていただきます。
ありがとうございました。
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