> ニュース一覧 > ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.21・・・同性結婚と日米離婚事情--男の子を持つと、夫婦は離婚しにくくなる?(ライクス)- 2013.07.16(火) 17:18
ゼロから学ぶ・不思議の国アメリカ--ジャーナリスト・長田美穂のシアトル通信 No.21・・・同性結婚と日米離婚事情--男の子を持つと、夫婦は離婚しにくくなる?
ライクス
2013.07.16(火) 17:18
アメリカは、ついに、同性婚が認められる社会になった。6月23日、連邦最高裁が、「結婚は男と女による法的な結合とする」と定めた「結婚防衛法」(Defense of Marrage Act)に、違憲判決を下したのだ。
一足早く、2012年12月に同性婚を認めたワシントン州では、レズビアンやゲイのカップルがせききって結婚している。私の女性の友人も、結婚してすぐにフェイスブックのプロフィール写真を、「彼女」とのツーショット写真に変えた。
和やかにほほえむ中年女性2人の姿には、「結婚」の概念を根本的に変えるように迫るパワーを感じた。
ところで、こんなことを考えた。結婚の法的枠組みが広くなると、将来的には、アメリカの離婚率にも影響するのだろうか。
離婚率は主に、2つの方法で調べた数字が用いられている。
1つは、人口1000人あたり離婚発生率。2011年、アメリカは世界6位の3.6件。日本は1.87件。
もう1つは、一年間で発生する結婚の件数に対する離婚の件数の割合。こちらはここ数年、だいたいアメリカはおよそ50%前後、日本は35%あたりで推移している。
この数字には、ちょっと驚いた。ぼんやりと思い描いていた、「アメリカは離婚の多い国、日本とは違う」というイメージよりもずいぶん、日米の離婚率は接近している。
よく「アメリカの夫婦の2組に1組は離婚する」というが、「日本の夫婦も3組に1組は離婚する」のである。
もっとも厳密には、離婚率はトリッキーな数字らしい。年代によって離婚率は大きく異なる。今年結婚する夫婦と今年離婚する夫婦は、当たり前だが「別の夫婦」なので、それを一緒にして「2組に1組は離婚する」といっていいのかという問題が残る。
それでも「3組に1組」も十分に高いといっていい。
ただ、「このままいくと、アメリカ化か?」という心配は、数字の傾向からみる限り、しなくてもよさそう。アメリカは1960年代から離婚率が上昇し1980年をピークに下がりはじめ、ずっと上昇傾向だった日本は2000年代に入ってゆるやかに下がってきているからだ。
さて日米の離婚の理由について、おもしろい研究をみつけた。
「離婚とその要因-わが国における離婚に関する要因分析」(安蔵伸治・明治大学教授)がそれだ。
離婚要因については、1960年代後半から80年代始めにかけて離婚率が急上昇したアメリカで、多くの実証的研究が手がけられてきた。
その結果、離婚は、次のような場合に多いとわかった。
(1)離婚する人の人口学的特質
・早婚であるほど、離婚の確率は高まる。
・再婚は、初婚よりも25%も離婚率が高い。初婚が離婚に終わる人たちは、その特質を再婚にも持ち越す傾向がある。
・子どものいない夫婦の離婚率は、子どものいる夫婦より高い。
・特に子どもが息子なら、離婚抑止効果が高くなる。父親が、子どもが息子なら娘よりかかわり合いを強くし、彼への投資を多くするため、息子の存在は家庭の安定性を上げると考えられる。
(2)個人や家族と、その社会との結びつきの強さについて
・結びつきが強い場合は、人々は結婚相手選択に慎重になり、妻と夫の役割を尊重する、弱いと、社会規範にとらわれなくなり、離婚を恥と思わなくなる。
・教会への加入率が高い地域では離婚が低く、人口変化率と都市化率が増加すると離婚率が高くなる。
(3)価値観の変化
・女性の経済的自立や社会進出が進むと、結婚や男女の役割分担についての伝統的価値観が変化し、離婚の可能性を高める。
こういった、アメリカでの離婚要因の特徴は、日本人にもあてはまるのか。
さらに、人格形成に大きな影響をもつ「15歳の時の生活環境」が、日本人の離婚にどう影響するかという視点を加えて、安蔵教授は日本人のデータを分析した。
その結果次のことが分かったのだ。
男性の場合、「未就学児の存在」と「高等教育を受けている」ことが、離婚の抑止効果をもつ。
また子どもが男児の場合は、女児より、離婚の歯止めになる。
そして15歳時に片親しかいなかったり、15歳時に母親がフルタイムで働いている場合は、離婚経験が多い。
女性の場合は、未就学時がいれば離婚に抑止効果をもつが、男性の場合ほどではない。
さらに女性も男性同様、男児がいる方が離婚が抑制される。しかしそれもまた、男性の場合ほどではない。
女性が結婚に関する非伝統的な価値観をもつ場合は、離婚可能性が高まる。
要は、日本の離婚要因はアメリカのそれをほぼなぞっていたのだ。伝統的な結婚観をもち、伝統的な結婚生活を営んできた両親に育てられた人は、離婚をしにくい傾向にあるということらしい。
おまけに、「男子尊重」の発想が、日米双方で離婚率に影響していたとは。特に男親に。この事実にはがっかりした。
さてアメリカで増えるであろう同性婚は、離婚率にどう影響するのだろう。
伝統的な結婚観とは対極にある、結婚の形である。離婚率は高くなるのだろうか。
あるいは、長い間待ち望んでようやく認められた権利なのだから、結婚という結合の形を大切にはぐくむ人が多くなり、逆に離婚率は低くなるのだろうか。
いずれにせよ、アメリカ社会はこうしてどんどんと、社会を新しく進化させていく。
日本でも、同性愛者をはじめ、伝統的な男女の愛の形にとらわれない志向をもつ人がかなりの割合でいることが、調査で明らかになっている。日本にも、時間はかかってもいつの日か、同性婚合法化の日がくるのだろう。
フリーライター
長田 美穂
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。2010年8月に『ガサコ伝説『百恵の時代』の仕掛人」(新潮社)を刊行、10月よりシアトル在住。
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